給料や銀行の預金口座の差押え(強制執行手続き)をするには、次の3点セットが必要です
まず、離婚にあたり、公証役場で養育費などの内容を記載した公正証書を作成します
公正証書を作成している場合には、万が一、養育費が不払いになった場合には、裁判などをしないで、給料や銀行の預金口座の差押えなど強制執行をすることができますので、離婚にあたり、公正証書を作成しておくことをおすすめいたします。
また、上記の法的な効果に合わせて、給料を差押えられると会社での立場に影響が出たり、銀行の預金口座を差押えられると非常に不便ですので、債務者に対して、非常に高い心理的効果が期待できると考えていいでしょう。
公証役場から債務者に対して公正証書を送達してもらう
よく勘違いされていらっしゃるのですが、実際には、公正証書を作成しただけでは給料や銀行の預金口座の差押えなどの強制執行をすることができません。
裁判所での強制執行手続きの前段階として、「公正証書の作成+債務者への送達+執行文の付与」の3点が必要となります。
つまり、債務者への送達や執行文が付与されていない状態であれば、公正証書を持って裁判所に強制執行の申し立てを行おうとしても受理してもらえませんので十分に注意してください。
公正証書の送達は公正証書作成後でもすることができますが、債務者が公正証書を受け取らなかったりすることもありますので、後々の手間を考えると公正証書作成時に送達しておくことをおすすめいたします。
なお、送達が完了(債務者が公正証書の受け取り)すれば、公証役場から送達証明書が発行されますので、公正証書と一緒に大切に保管しておきます。
当事務所に離婚の公正証書作成のご依頼をいただいた場合には、公正証書作成時に送達の手続きもさせていただいております。
ややこしくて、よくわからないという場合は、当事務所に公正証書作成と送達手続きのご依頼をいただければと思います。
公証役場で公正証書に執行文を付与してもらう
強制執行手続きの前段階3点セットの最後が執行文の付与です。
強制執行の申立をすることになったら、公正証書の正本(債権者が保管している公正証書)を公証役場に持っていき、公証人に執行文を付与といって、もともとの公正証書の最後のところに執行文というものを付けてもらいます。
公正証書の送達は、債務者の受け取りが必要ですので公正証書作成時に行うことをおすすめいたしますが、執行文の付与は、債権者だけでできますので、養育費の支払いが滞り、強制執行することを決めた時点で行うことが多いでしょう。
執行文の付与された公正証書と送達証明を持って裁判所で強制執行の申し立てをすることができるようになります。
けっこう大変なように感じるかもしれませんが、養育費の支払いを求めて、裁判や調停をすることを考えると、公正証書を作成しておくメリットは十分にあるでしょう。
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裁判所での強制執行手続き
強制執行手続きの準備段階、必要な書類や情報の収集
- 債務者が勤務している会社の資格証明書(給料を差し押さえる場合には、会社の登記事項証明書または代表者事項証明書を法務局で取得する。発行日から3か月以内。)
- 住民票(公正証書作成後に転居して現住所と公正証書に記載された住所とが異なっている場合に住所のつながりを確認するために必要です。発行日から1か月以内。)
- 戸籍謄本(離婚後に旧姓に戻って、公正証書に記載されている氏名と現在の氏名とが違っている場合に氏名のつながりを確認するために必要です。発行日から1か月以内。)
- 債務者の預金口座がある銀行名と支店名(銀行の預金口座を差押える場合に必要です)
申立書の作成と提出
裁判所に提出する申立書は、債権差押命令申立書表紙、当事者目録、請求債権目録、差押債権目録の4種類です。
債権者(申立人)の宛名を記載した封筒2枚(第三債務者(債務者の勤務先や銀行の預金口座)が複数のときは第三債務者の数+1枚)を添付します。
申立書の費用
- 収入印紙4000円(債権者、債務者が各1名、公正証書が1通の場合)
- 郵便切手代約3000円(債権者、債務者、第三債務者各1名の場合)
申立をする裁判所
強制執行の申し立てをするのは債務者の住所地や勤務地の所在地の地方裁判所です。
裁判所のホームページに、強制執行手続き(給料や銀行口座の差押え)や各書面の記載方法はについて詳しく記載されていますのでご参考になさっていただければと思います
裁判所の強制執行の申立ては費用もかかりますし、時間や手間もかかりますので、実際に養育費の支払いが滞った場合には、まずは債務者に電話やメールで請求をしましょう
電話やメールで請求する、直接会って話をする
最も簡単にできて費用もかからないのは電話やメールをすることですので、養育費の支払いが滞ったら、まずは相手方に電話やメールで連絡してみましょう。
直接会って話をするのもいいでしょう。
それでも支払いがない場合には内容証明郵便を送ってみる
債務者は、公正証書を作成していて養育費の支払いをしなければ給料や銀行の預金口座を差押えられる可能性があることはわかっているはずですし、電話やメールで連絡するときに強制執行のことも伝えているはずですので、支払いに応じてくる可能性はあるでしょう。
強制執行の申立は最終的な手段として考える
少し考えるとわかるのですが、債務者の給料を差し押さえると、債務者の会社の立場などに影響を与えてしまいますので、債務者がその会社を辞めてしまう可能性があり、その後、無職になったり、勤務先を追跡することがさらに困難になってしまったりする可能性があります。
特に、転職グセのようなものがある場合には、給料を差し押さえられればすぐにその会社を辞めてしまう可能性が高いと言えるでしょう。
重要なことは、養育費を支払ってもらうことであって、相手に会社を辞めさせることではありませんので、遅れがちでも一部でもいいので支払ってもらうように話を進めることのほうが重要であると考えることもできるかもしれません。
もちろん、いきなり強制執行をしてもいい
内容証明郵便なんか送ったら、会社を辞めて引っ越してしまったり、預貯金を隠そうとしてしまうのではないかと考える方もいらっしゃると思いますし、いきなり強制執行したほうがいいケースもあるでしょう。
そのような場合にはいきなり強制執行するということもいいでしょう。
それぞれの考え方やその時のケースによってご判断いただければと思います。
面会交流を拒否しないようにするほうがいい
もちろん、子供の意思や福祉上の問題など、いろんな問題があり、面会交流をさせない、させたくないということもあるでしょうが、やはり子供との面会交流は養育費の支払いを確保するうえで重要な要素であると考えることもできるとは思います。
「え?養育費と面会交流はまったく別のものだから関係ないでしょ?」とお考えになられる方もいらっしゃるかもしれません。
でも、逆に、養育費を支払わないけど、面会交流は認めて欲しいと言われて「はい」と言えるかどうかということだと思います。
法的には別々のものではありますが、心理的には連動してくることだと思われます。
あと、重要なことは、面会交流をすることによって、相手方の生活状況(例えば、高い車に買い替えたなど)がわかりますし、ある程度の関係性を保っておくことは重要だと言えるのではないでしょうか…?
もちろん子供の福祉を尊重すれば面会交流をさせないほうがいいこともありますので、それぞれのケースによってご判断いただければと思います。
最後におさらいすると…
養育費の支払いを確保するために覚えておいて欲しいことは…
- 離婚前に公正証書を作成して送達まで行っておく
- 養育費の支払いが滞ったら債務者に電話やメールで連絡する。それでもダメなら内容証明郵便を送ってみる。もちろん、いきなり強制執行をしてもいい。
- 強制執行をすることになったら、公証役場で公正証書に執行文を付けてもらう
- 裁判所に強制執行の申立を行う
- できれば面会交流は拒否しない
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